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50代ナースの働き方・キャリア

ナフサ不足、ポテトチップスの袋から見えた、在宅医療の「静かな危機」

50代ナースの働き方・キャリア

きっかけは、ポテトチップスの袋だった。

「原材料費の高騰により……」という注意書きを目にして、ふと「ナフサ」という言葉をネットで調べてみた。

それが始まりだった。

ニュースを読み進めると、医療現場への影響が大きく取り上げられていた。ナフサはプラスチックなどの化学製品の基礎原料だ。

遠い世界の話のように聞こえるかもしれない。しかし、私たちが日々ケアに向かう在宅医療の現場は、このナフサを原料とする製品であふれている。

同じ医療現場で働く方なら、最近「物品が届くのが遅い」「価格が上がった」と感じたことがあるかもしれない。今回は、在宅医療の現場から見えてきたこの危機のリアルと、それに対して私たち医療者に何ができるのか、一緒に考えてみたいと思う。

在宅医療を支える、大量の「使い捨て」

在宅看護の現場は、ディスポーザブル製品(使い捨ての医療機器)なしには1日たりとも成り立たない。

  • 注射器や点滴バッグ
  • カテーテルや尿の管
  • 人工透析の回路(2日に1回必要な方もいる)
  • 処置やおむつ交換のたびに使う、使い捨て手袋やエプロン

感染予防のために「清潔」と「不潔」を厳密に区別しなければならない医療の世界では、特に使い捨て手袋の消費量は膨大だ。

そしてこれらは、患者さんやご家族が「自費」で購入していることも少なくない。だからこそ、価格上昇の影響をダイレクトに受けてしまう。

訪問先で感じる、高齢者の方々の「無言のSOS」

在宅で過ごす方のほとんどは、年金暮らしの高齢者だ。医療費や介護費を、文字通りギリギリの予算でやりくりしている。

訪問するたび、肌で感じる空気がある。

直接「お金がなくて困る」と言われることはない。けれど、感染予防のためのプラスチック手袋を、なるべく交換回数を減らそうと限界まで使おうとされていたり、ティッシュ1枚使うのすら、どこか申し訳なさそうにされている姿を目にすることがある。

「物が高くなって本当に大変ね」

何気ない会話の中でこぼれる一言の裏には、生きるために不可欠な消耗品すら買えなくなるかもしれない、切実な不安が隠れている。

病院が困るなら、在宅はもっと品薄になる

「ナフサ不足で医療品が不足している」というニュースを見たとき、私は強い危機感を覚えた。

大口顧客であり、強固な備蓄体制もある「病院」ですら物資不足に頭を抱えているのだ。だとしたら、個人宅が個別に購入している「在宅医療」の現場はなおさら後回しになり、真っ先に品薄になってしまうのではないか。

在宅医療はもともと、必要最低限の物資で運営されている。足りないものは家にあるもので代用することも珍しくない。エプロンがなければゴミ袋を加工し、ガーゼが足りなければ清潔なタオルで補う。現場はいつも、家族と医療者の知恵による綱渡りで成り立っている。

しかし、尿の管や点滴の管、注射器に「代用品」はない。
もし供給が滞れば、真っ先に底をつき、代えがきかない製品ゆえに命の危機に直結する。そんな脆弱な場所に、在宅医療はある。

遠い国の出来事は、目の前の命につながっている

お菓子メーカーなら、原材料が上がれば「内容量を減らす」「価格を上げる」ことで企業を守れるかもしれない。

しかし、医療の価格(診療報酬)は国が決める公定価格だ。物価に合わせて明日から値上げ、というわけにはいかない。身動きが取れない制度の狭間で、現場の医療機関も、そして患者さんも、ただじわじわと首を絞められている状態だ。

ポテチの袋から始まった小さな気づきは、私が日々ケアしている患者さんの生活、そして命にしっかりとつながっていた。

世界のどこかで起きている争いや国際情勢の悪化は、決して他人事ではない。一刻も早い平穏を、そして声の届きにくい在宅の現場にまで温かい支援が届くことを、ただ祈るばかりだ。

ただ、祈るだけで終わりたくないとも思う。

私達、医療者に出来ること

私たち医療者にできることは、決して大きくはない。それでも、一つ一つの物品を無駄にしないよう丁寧に扱うこと、患者さんやご家族の「何気ない一言」の裏にある不安に、いち早く気づいてあげること。そして、必要な物資が本当に不足しそうなときには、我慢を強いるのではなく、早めに関係者へ相談し、代替手段を一緒に探ること。

大きな情勢を変える力はなくても、目の前の患者さんの不安に寄り添うことならできる。それもまた、私たち看護師にできる、小さいけれど確かな仕事なのだと思う。

患者さんのことを周りの人で支えていける素敵な世の中であってほしいですよね。こちらは高温な環境でも暑くないと言っている方へ私達ができることをわかりやすく紹介しています。こちらもご覧ください。

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