出生率過去最低の発表がありましたね。
厚生労働省の人口動態統計によると、この10年でこれだけ数字が変わっています。
| 項目 | 10年前(2015年確定数) | 最新(2025年概数) | 10年間の減少幅 |
|---|---|---|---|
| 出生数(日本人のみ) | 100万5,677人 | 67万1,236人 | マイナス33万4,441人 |
| 合計特殊出生率 | 1.45 | 1.14 | マイナス0.31ポイント |
国の機関(社人研)がかつて出した将来推計では、「出生数が67万人台になるのは2040年ごろ」と予測されていました。それが実際には、想定より15年も早いペースで進んでいるわけです。
「手当をあげるから子どもを産んで」と言われても、生活の土台が揺らいでいる中では、到底割に合わないと感じるのがリアルな実感じゃないでしょうか。
給料はなかなか上がらない一方で、毎月引かれる税金や社会保険料は増える一方。スーパーに行けば物価高を痛感する日々です。日々の生活を維持するだけでカツカツなのに、その先の何千万円もかかる教育費や子育ての負担まで背負うのは、リスクが高すぎると感じて当然だと思います。
では、国の対策と国民の実感の間には、どんなズレがあるのでしょうか。
大きく3つに整理してみました。
国の対策と現実の「3つのズレ」
① 「一時金」vs「20年の固定費」
国は児童手当の増額などを打ち出していますが、それは数万円レベルの「一時的な足し」に過ぎません。対して子育ては、住居費・食費・塾代など20年以上続く莫大な固定費の増加を意味します。もらえる額と実際にかかる額が、あまりにもかけ離れているんですよね。
② 「手当の支給」vs「現役世代の手取り減少」
子育て世帯に手当を配るための財源(支援金制度など)として、結局は現役世代の社会保険料が上乗せされます。「片方でもらって片方で取られる」という矛盾が起きているわけです。
③ 「産んだ後の支援」vs「産む前の生活基盤」
最大の問題は「結婚・出産に踏み切れない若者の貧困」だと思うのですが、政府の対策は「すでに子どもがいる世帯」への支援が中心です。独身の若者が生活を安定させるための根本的な所得向上(減税や賃上げ)には、なかなか切り込めていません。
結果として、「子どもは国の宝」と言われながらも、実質賃金が下がり続ける日本では、子どもを持つことが**「生活水準を落とすリスク」**になってしまっています。若者が「子どもを育てよう」と思えないのは、サバイバルのような状況の中では至極真っ当で合理的な判断とも言えます。
少子化を食い止めた国に学ぶ――フランスの「本気の仕組み」
かつて出生率を2.0前後までV字回復させた国として、よく名前が挙がるのがフランスです(ただし近年は1.6台まで低下しており、少子化は世界共通の課題でもあります)。
フランスの対策の最大の特徴は、「数万円の手当を配る」という点的な支援ではなく、「多子(子どもが多いこと)を徹底的に優遇する社会構造」を100年近くかけて構築してきた点にあります。具体的には3つの柱があります。
① 子どもが多いほど大減税される「N分N乗課税方式」
フランスの所得税は、個人ではなく「世帯全体の人数」を基準に計算します。家族の人数(N)が多いほど所得が分散されたとみなされ、適用される税率がグッと下がる仕組みです。しかも3人目からは1人としてフルカウントされるため、子どもが増えるほど減税効果が大きくなります。
「子どもが増えても、税金で手取りが減らない。むしろ得をする」という安心感が持てるのは、日本とはかなり違いますよね。
② 「3人目」から爆発的に手厚くなる手当
フランスの家族手当は原則2人目以降から支給されますが、3人目が生まれた瞬間にバックアップが跳ね上がります。支給額が加算されるだけでなく、子どもが3人以上いる家庭には「多子家族カード」が発行され、国鉄(TGVや電車)の運賃が最大75%割引、美術館や公共施設も格安で利用できます。
「3人育ててくれたら、国をあげて全力で生活費を浮かせます」という強烈なメッセージですよね。
③ 「仕事を辞めなくていい」保育のインフラ
お金だけでなく、「時間とキャリア」を守る仕組みも整っています。登録保育ママ(アシスタント・マテルネル)に預ける費用も国が手厚く補助しており、3歳からはすべての幼児が保育学校に通えるため、3歳以降の保育料は実質無料です。社会全体に「母親も働くのが当然」という意識が根付いており、育休からの復職でキャリアに傷がつくケースは日本より圧倒的に少ないと言われています。
「言葉」ではなく「数字と制度」で本気度を示せるか
海外の成功例を見ると、少子化を食い止めた国に共通しているのは、言葉ではなく、圧倒的な数字と制度で本気度を示したという点ではないかと感じます。
経済的な支援は「完璧な特効薬」ではないかもしれません。でも、生活の不安を取り除く「最低限の土台」であることは間違いないと思います。
日本でも少子化対策は進められていますが、「国が本気で子どもを増やしたい」という意思が、制度の設計にまで反映されたとき、はじめて若者の気持ちも動くのではないでしょうか。これからの対策に、期待したいですね。

