SBARという型は知っていても、実際の緊急対応の場でとっさに報告するとなると、何から伝えればいいのか迷ってしまう——そんな経験はありませんか?
病棟でも訪問看護でも、状況を報告する場面は日常的にあります。中でも訪問看護は、医師もスタッフもすぐそばにいない分、電話越しの報告だけで判断材料を伝えきる力が求められます。
今回は、実際にオンコールで対応し救急搬送となったケースをもとに、SBARをどう組み立てて報告したのかを整理してみました。記事の後半では、この症例から見えてきた「報告を伝わりやすくする3つのコツ」もご紹介します。
ぜひ、次の緊急コール対応の参考にしてみてください。
症例(この症例は個人が特定されないよう、一部の状況を調整・匿名化しています)
19時、尿道カテーテル留置中の患者さん、真っ赤な血尿が出ていると家族からオンコールあり。 腹痛もなし、特に血尿以外の症状はない。昼頃までは、普通の色であった。さっき気付いたら真っ赤な尿が溜まっていた。 バルーンバッグの管内にコアグラ(血塊あり)尿量400ml (朝9時に尿破棄後より) バイタル異常なし。腹部緊張なし。 数日前にバルーン閉塞あり、交換。交換後7日間程。浮遊物や混濁が多めでカテーテルが詰まっていた。 交換直後の血尿はなし。 基礎疾患は前立腺肥大で尿閉があり。尿道カテーテル留置中。 脳梗塞後遺症にて左麻痺あり、ほぼ寝たきり状態の方。意思の疎通は可能。 本日はずっとベッド上で過ごしていた。食事の時だけベッドをギャッジアップし起き上がった。 バルーンのルートが引っ張られた様子も引っ張った覚えもない。 家族も本人も数日前にも詰まったこともあり、また、現在は血が出ていて心配だから しっかりと原因を調べてほしい。何か起こっているなら治療してほしい。と希望
SBARを用いた報告の実際
S(状況:Situation)
〇〇様について、19時にご家族から「真っ赤な血尿が出ている」とオンコールがあり訪問しました。現在、バイタルサインに異常はなく、腹痛などの自覚症状や腹部緊張はありませんが、カテーテルバッグ内に真っ赤な血尿が400ml貯留しており、管内にコアグラ(血塊)を認めます。
B(背景:Background)
基礎疾患に前立腺肥大による尿閉があり、尿道カテーテルを留置中です。脳梗塞後遺症(左麻痺)でほぼ寝たきりですが、意思疎通は可能です。本日はベッド上で過ごし、食事時のみギャッジアップを行いました。ルートが引っ張られたエピソードはありません。なお、数日前に浮遊物と混濁によるカテーテル閉塞があり、7日前に交換した経緯があります。交換直後の血尿はありませんでした。昼頃までは通常の尿色だったとのことです。
A(アセスメント:Assessment)
数日前の閉塞・交換のエピソードや前立腺肥大の既往、管内のコアグラから、カテーテルの機械的刺激による尿道・膀胱粘膜からの出血、または前立腺部尿道からの出血の可能性も考えられます。現時点でバイタルは安定しており、腹痛やルート牽引の兆候はありませんが、出血量も多くコアグラも見られるため、再びカテーテル閉塞を起こすリスクも高い状態です。
R(提案:Recommendation / 依頼)
「ご本人・ご家族ともに、数日前の閉塞に続く今回の真っ赤な血尿に対して非常に強い不安を持たれています。現在、『今すぐ救急車を呼んで病院で原因を調べてほしい、治療してほしい』と、緊急搬送を強く希望されている状況です。
救急搬送の方向で対応してもよろしいでしょうか?それとも、経過観察として、明日受診の方向で検討されますか?
報告後の経過
この報告を受けた医師は救急搬送が必要と判断し、受入病院を調整。結果として救急車での搬送となりました。搬送するかどうかを決めるのは医師ですが、その判断材料を漏れなく届けるのが看護師の役割です。
この症例から見えるSBAR活用の3つのコツ
今回のケースを振り返ると、SBARを「型」として使いこなすためのポイントが3つ見えてきます。
S:数値と事実を迷わせずに先出しする
「血尿400ml」「バイタル異常なし」「腹部緊張なし」など、判断に直結する数値・事実から伝えることで、聞き手は状況を素早く頭の中に組み立てられます。感情や経過の説明を先に持ってくると、肝心な情報が埋もれてしまいます。
A:見立てを言い切る
「わかりません」ではなく「〜の可能性が考えられる」まで自分の考えを提示すること。今回も「カテーテルの機械的刺激による出血の可能性」まで踏み込んだことで、医師は判断のスタートラインに立ちやすくなりました。アセスメントは情報の羅列ではなく、看護師としての見立てを示す場面です。
R:選択肢の形で提案する
「どうしましょうか」ではなく「搬送しますか、それとも経過観察としますか」と選択肢を示すことで、医師は即座に判断できます。今回も本人・家族の希望を添えたうえで二択を提示したことが、スムーズな受け入れ調整につながりました。
まとめ
緊急コールは、状況を整理する時間もないまま報告に踏み切らなければならない場面が多いものです。だからこそ、S(事実を先に)・A(見立てを言い切る)・R(選択肢で示す)という型を体に馴染ませておくことが、次のオンコール対応での落ち着きにつながります。次に緊急コールを受けたときは、まずこの3点を思い出してみてください。報告時に迷った時に思い出していただけたら嬉しいです。
参考図書
こうした緊急対応も、訪問看護という仕事の一面です。病棟との違いや、訪問看護だからこそ感じるやりがいについては、こちらの記事も参考にしてみてください。


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