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新人・後輩育成

転職者への指導|大切なのは「教え方」ではなく「今いる位置」を知ること

新人・後輩育成

新人や転職者に同じように教えているのに、なぜか覚えるスピードや反応に差が出る——そんな経験はありませんか?

私自身、職場に来た2名の転職者さんへの指導を通して、そのヒントに気づきました。

この記事では、私が実際に感じた違和感と、そこから調べてわかったことをお伝えします。

読み終える頃には、「教え方」を考える前に見るべきポイントが見えてくるはずです。

Aさんの一言がきっかけだった

最近、職場に2名の転職者さんが加わりました。訪問看護の経験があるAさん(50代)と、経験のないBさん(40代)です。

年齢も経歴も違うふたりに対して、それぞれの経験を踏まえながら、相手の反応を見つつ説明の仕方を変えていました。

そんな中、Aさんからこんな言葉がありました。

「やってみないと覚えにくい」

同じ50代の私にも、覚えのある感覚でした。「これは年齢が関係しているのかもしれない」——そう思い、調べてみることにしました。

調べてみてわかったこと

NIA(米国国立老化研究所)の解説によると、年齢を重ねると新しい情報を覚えるのに以前より時間がかかるようになるのは、加齢に伴うごく自然な変化だとされています。またNIH(アメリカ国立衛生研究所)による老化研究の紹介記事では、年齢とともに脳内の神経のつながりを強める働き(シナプス可塑性)が低下し、それが学習や記憶に影響することが紹介されています。

一方で、これまでの経験や知識と結びつけながら理解する力は比較的保たれやすく、新しいことも「意味づけ」ができると記憶に残りやすいと言われています。

脳は、意味や感情、経験と結びついた情報ほど長期記憶に残りやすい性質を持っています。つまり、新しい知識をゼロから覚えるのではなく、これまでの経験を書き換えたり整理したりする作業が必要になるということです。

「年齢だから覚えられない」のではなく、「経験と結びつけないと定着しにくい」——そう言い換えたほうが正確なのかもしれません。

覚え方の違いは能力の差ではなく、その人がすでに持っている「知識」や「経験」という下地をどう使って新しい情報を整理しているかの違いだったのです。下地が違えば、同じ教え方をしても届き方が変わってくる。だからこそ、教える側もその違いを理解して関わることが大切になります。

AさんとBさんの違いから気づいたこと

Aさんの発言から見えてきたのは、彼女が経験と照らし合わせながら新しい情報を「更新」している状態だということでした。

一方、訪問看護の経験がないBさんは、新しい知識をそのまま「新規に取り込む」状態にあります。Bさんは、伝えたことを一つずつ、言われた通りに行いながら、わからないことはその場で質問を挟みつつ覚えていく様子が見られました。

このふたつの状態の違いだけで、伝え方や伝える内容は大きく変わってきます。

同じ看護師でも、訪問看護の経験があるかないかという違いはもちろん、その人がどう覚えていくタイプなのかにも意識を向ける必要があります。

看護教育の研究でも、「新人はみんな同じように教えればよい」という考え方ではなく、その人がどう学ぶタイプなのかを見ることの大切さが指摘されています。

つまり、それぞれの人が今どのような状態にあり、どこで立ち止まっているのかを知ることで、初めて伝え方を選べるようになるのです。

実際に指導方法を変えてみた

この気づきをきっかけに、Aさんへの指導方法を変えてみました。まず処置などを実施している場面を見学してもらい、そのあとで実際にAさん自身に行ってもらいながら説明を加えるスタイルにしたのです。

経験と結びつけながら「やってみる」ことで理解が進むAさんにとって、このやり方は言葉での説明だけよりもスムーズだったように感じます。一方でBさんには、これまで通り一つずつ丁寧に言葉で伝え、質問を受けながら進めるスタイルを続けています。

同じ職場、同じ内容を教える場面でも、相手に合わせて指導のスタイルを変えることで、伝わり方が変わってくることを実感しました。

まとめ|「教え方」より先に見るべきもの

新人さんや転職者さんを指導していると、「なかなか覚えてもらえない」と感じる場面があります。

でもそれは能力の差ではなく、その人がこれまで積み重ねてきた経験という下地、そして新しい情報を整理する過程が違うだけなのかもしれません。

下地が違えば、同じ教え方をしても伝わり方は変わります。だからこそ「同じように教える」のではなく、「この人は今、どこで立ち止まっているのだろう」と、その人の位置を見ることから始めてみる。

その視点を持つだけで、伝え方や関わり方は少しずつ変わっていきます。

今回の経験を通して、私自身も「教え方」よりも先に、「相手の今いる位置を見ること」が大切なのだと改めて感じました。


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