7月・8月は手足口病の流行しやすい時期です。
近年の手足口病は、ウイルスの変化により「従来のイメージ」とは違う現れ方をすることも増えているようです。
「普通の症状(手のひら、足の裏、口の中のポツポツ)」しか知らないと、お尻に大量にできたり、数ヶ月後に爪が剥がれたりした時に、「別の怖い病気では!?」とパニックになってしまいます。事前に「これらも手足口病(特にコクサッキーウイルスA6型など)の可能性がある」と知っておくだけで、子供に症状が出現した時も大人本人も冷静に対処できるのではないでしょうか。
典型的な手足口病の症状は?
手足口病は、主に生後6ヶ月〜4歳前後の乳幼児を中心にみられる夏風邪の一種です。一般的に教科書や一般的な医療サイトに載っているベーシックな症状は以下の通りです。
【場所の特徴】名前の通り「手・足・口」が中心
- 手のひら・足の裏:2〜3mm程度の、中央が少し白っぽく周囲が赤い水ぶくれ(水疱)ができます。
- 口の中(粘膜・舌):口内炎のような潰瘍(かいよう)ができ、特にご飯を食べるときに激しく痛みます。
- 手足の甲・指の間:手のひらだけでなく、手の甲や足の甲、指の側面にもポツポツと出ます。
【見た目の特徴】かゆみや痛みは控えめ
- かゆみ・痛みは少ない:皮膚に出る水ぶくれは、子どもでは「痛がらない・かゆがらない」ことがほとんどです(口の中は痛がります)。
- かさぶたにならない:水ぼうそうとは違い、水ぶくれが破れてジュクジュクしたり、かさぶたになったりせず、数日(3〜7日)で自然に吸収されて消えていきます。
【全身の特徴】熱は出ないか、出ても微熱程度
- 熱はあまり上がらない:感染しても約半数は熱が出ません。出たとしても37〜38度台の微熱で、1〜2日で平熱に戻ることが多いです。
- 食欲不振・よだれが増える:口の中の痛みのせいで、ごはんや水分を嫌がったり、飲み込めないよだれが口からあふれたりします。
典型的な症状のときの「ケアのポイント」
- 水分補給が最優先:口の中が痛くて食事がとれなくても、水分(麦茶、冷たいスープ、イオン飲料など)がとれていれば数日は大丈夫です。
- 刺激物を避ける:みかんジュースなどの酸っぱいもの、トマト、塩気の強いものは口の中に激痛が走るため避け、プリン、ゼリー、冷ましたおかゆなど、噛まずに飲み込めるものを与えます。
手足口以外の症状も、手足口病の可能性を考えて周囲への感染に注意しましょう。
【場所の異変】こんな部位にも発疹が出ます
- お尻(臀部)・太もも:お尻全体が真っ赤な水ぶくれで埋め尽くされるケースが多発しています。
- ひじ・ひざ・腕全体:関節まわりに密集しやすく、「ひどいあせも」や「虫刺され」と勘違いされがちです。
- 頭皮・髪の毛の生え際:髪に隠れた頭皮の中にまでポツポツと水ぶくれができることがあります。
- おへその周り・下腹部:体幹には出にくい病気ですが、おへその周囲だけ強く出る症例があります。
- デリケートゾーン(陰部):粘膜に近い部分に水ぶくれができ、強い痛みを伴うことがあります。
【見た目の異変】「みずぼうそう」と見間違う激しさ
- 全身に広がる大きな水ぶくれ:コクサッキーウイルスA6型(CA6)などの場合、1,000個以上の激しい水ぶくれが顔や体幹を含めた全身に広がり、水ぼうそう(水痘)のようになることがあります。
- ただの赤い斑点(水ぶくれにならない):水ぶくれにならず、ただの赤いブツブツ(丘疹)のまま終わるケースもあります。
【時期の異変】治った「1〜2ヶ月後」に爪が剥がれる
- 爪甲脱落症(そうこうだつらくしょう):手足口病がすっかり完治した 1〜2ヶ月後に、手や足の爪が浮いてペロッと剥がれ落ちることがあります。ウイルスの影響で一時的に爪の成長が止まることが原因です。下から新しい爪が生えてきているため心配ありませんが、非常に驚かれます。
【大人の異変】「歩けない・持てない」ほどの激痛
- ガラスが刺さったような痛み:大人が感染すると、足の裏の発疹が「痛くて歩けない」、手のひらが「ペンやお箸を持てない」という重症パターンになりやすいです。
- かゆみや高熱を伴う:子どもは熱が出ない(または微熱)ことも多いですが、大人は39度近い高熱や、強い皮膚の「かゆみ」に悩まされるケースが目立ちます。
知っておくべき注意点
- 「アルコール消毒が効きにくい」ことを伝える:原因となるエンテロウイルス属はアルコールに強いため、「石けんと流水での20秒以上の手洗い」が最も有効です。
- 「治った後もウイルスは出ている」ことを伝える:熱が下がり、発疹が落ち着いた後でも、便からは2〜4週間(長いと数ヶ月)ウイルスが排出され続けます。特にオムツ替えの後の手洗いは長期間徹底する必要があります。
急いで受診が必要な重篤の可能性サイン
- 高熱が3日以上続いている
- 激しい頭痛・首の硬直・嘔吐がある(髄膜炎の疑い)
- 意識がぼんやりする・呼びかけへの反応が鈍い
- けいれんしている
- 手足がふるえる・歩き方がおかしい
- 水分がまったく摂れず、6〜8時間以上おしっこが出ない
- 急に顔色が悪くなり、ぐったりしている
これらは重症化の危険性がありますので、速やかに受診してくださいね。
まとめ
手足口病は毎年夏になると必ずといっていいほど流行する感染症です。ウイルスの型によって症状の出方がかなり違うため、「教科書通りじゃない」ケースに慌てる保護者の方を、医療現場でもよく見かけます。
「お尻が真っ赤でパンパンに腫れていて、別の怖い病気かと思って…」と青ざめた顔で受診される方が、実は手足口病だったというのは珍しくない話です。
典型症状だけでなく、こうした「意外な症状」もあると頭の片隅に置いておくだけで、いざというとき焦らず・うつさず・早めに動けるはず。今年の夏、少しでもお役に立てたら嬉しいです。
