新人看護師の頃、先輩や医師への報告のたびに緊張してしまう、という方は多いのではないでしょうか。
私自身も新人時代から報告のたびに「何が言いたいの?」と聞き返され、悔しい思いを何度もしてきました。実は報告には、緊張していても要点を整理しやすくなる「型」があります。
今回は、ある夜勤での出来事をきっかけに、私が新人さんに伝えた「SBAR(エスバー)」という報告方法についてお話しします。報告のたびに緊張してしまう方、まだ報告に慣れていない方のヒントにしてくださいね。
新人看護師が経験した、忘れられない夜勤
夜勤は3人で50名の患者さんをみています。まだ数回目の夜勤に入った新人さんと勤務していた日のことです。
【現場での急な状況変化】
当時、気管切開をされ呼吸器使用中の患者様の気管から吸引時にチューブ1本程度の出血を確認しました。経皮的動脈血酸素飽和度の低下はなく、意識もはっきりしていました。
私は患者様の対応にあたり、もう一人の中堅看護師は別の緊急アラームの対応に追われていました。そこで、数回目の夜勤で緊張している新人さんに、当直医への緊急の電話連絡をお願いすることにしたのです。
私は処置をしながら、新人さんへ次のように伝えました。
「〇〇様の気管吸引中に出血を確認したこと、SPO2値の低下はなく意識もはっきりしていること、診察してほしいことを伝えて」と
その後、連絡を受けた医師がすぐに病棟へ駆けつけて適切な処置が開始となり、状況はなんとか無事に落ち着きました。
翌日、医師から届いた「報告方法」への指摘
翌日、医師から報告方法についてのお触れが回ってきました。
「まず名乗る。次に何が起きたのか。そして何をしてほしいのか。この3つを最初に伝えてほしい」という指導でした。実はこの順番だけでも、報告はぐっと伝わりやすくなります。
このとき医師からは「新人さんにはしっかり指導を。新人以外でも、何が言いたいかわからない報告をする人が多いので、この報告方法を統一してほしい」とも言われました。
新人さんは実際、何と伝えたのか?
新人さんに何と電話したのか確認したところ、緊張して慌てていたこともあり「○○号室の○○さんで、気管切開している呼吸器装着中の方が出血しているので来てほしい」とそのまま伝えたそうです。
医師からは「誰?」「どの病棟?」「どんな様子?」「急ぐの?」と矢継ぎ早に質問され、新人さんはわかる範囲で答えたものの、途中で「もういい」と電話を切られてしまったとのことでした。
私は急いで医師に来てもらいたい一心で、状況把握をしながら新人さんに電話をお願いしてしまいましたが、今振り返ると、状況をきちんと把握してからそれも含めて医師に伝え、来棟をお願いすべきだったと反省しています。新人さんであることへの配慮も、正直足りていませんでした。
少し言い訳をすると、その日の当直医師がたまたま気難しい方だった、という不運も重なってはいたのですが。
報告を整理する「SBAR」という型
この出来事の後、新人さんに伝えていた報告方法が、SBAR(エスバー) です。
今回の状況を例に説明します。
- S(Situation:状況) 今、何が起きているか
結論を簡潔に伝えます。「気管切開で呼吸器装着の○○さんが、気管から出血しています」など。 - B(Background:背景) その患者の既往歴やこれまでの経緯
「長期入院中で、今日まで特に状態変化はありませんでした。抗凝固薬などの服用はありません」など。 - A(Assessment:評価) その問題に対する自分の見解・考察
「出血量はチューブ1本程度でしたが、その後の吸引では血液が引けないので、持続してはいないと思います」など。 - R(Recommendation:提案) 相手にどうしてほしいかという要望
「今まで出血の既往はないので、診察と止血剤等の検討をお願いしたいです」など。
このように、とっさに伝える内容をSBARで整理することによって、「言いたいこと」も「どうしてほしいのか」もわかりやすくなります。
慌てている時は、ついつい自分の言いたいことを捲し立ててしまいがちですが、落ち着いてから伝えることも大切です。
あ!まず、どこの誰だかは最初に伝えてくださいね(笑)
完璧を目指さなくていい
実際には状況や緊急度がさまざまで、慌ててうまくSBARを意識できないこともあります。それでも、この順番と「伝えたいこと」を頭の片隅に置いておくだけで、報告前に何を伝えるか考える余裕が生まれ、いざというときに落ち着いて伝えられるようになります。
私自身も新人時代、「何が言いたいの?」「それで?」と言われ、悔しい思いを何度もしました。そのたびに「次は何を聞かれても答えられるくらい、情報を整理してから報告しよう」と少しずつ意識するようになり、今では以前ほど報告に緊張しなくなりました。
急変時は誰でも慌てます。新人さんならなおさらです。だからこそ、完璧な報告を目指す必要はありません。
まずは「何が起きているのか(S)」と「何をしてほしいのか(R)」の2つだけでも意識してみてください。それだけでも、相手には状況がぐっと伝わりやすくなります。
報告は、経験を重ねるたびに少しずつ上達していきます。最初から完璧にできる人はいません。今回紹介したSBARを一つの型として覚えておけば、緊急時でも落ち着いて伝えられる場面が、きっと増えていくはずです。
参考図書


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