SBARの型は知っていても、実際の緊急対応の場でとっさに報告するとなると、何から伝えればいいのか迷ってしまう——そんな経験はありませんか?
病棟でも訪問看護でも、状況を報告する場面は日常的にあります。中でも訪問看護は、医師もスタッフもすぐそばにいない分、電話越しの報告だけで判断材料を伝えきる力が求められます。
今回は、私が実際にオンコールで対応し「急ぎの対応が必要だった具体的なケース」をもとに、SBARをどう組み立てて報告したのかを整理してみました。記事の後半では、この対応から見えてきた「報告を伝わりやすくする3つのコツ」もご紹介します。
ぜひ、次の緊急コール対応の参考にしてみてください。
(報告の題材とする事例)
今回は、訪問看護の現場で実際によく遭遇する「尿道カテーテルを使用されている利用者様に、突然の血尿が出現」した場面から、SBARの組み立て方を考えていきます。
【状況の整理】
夜間のオンコールにて、ご家族から「カテーテル内の尿から血が出てる」と連絡が入りました。看護師が駆けつけて確認したところ、以下のような状態が把握できました。
お伺いした時の状態:カテーテルバッグ内が赤褐色で血尿を確認(血塊あり)。ご本人に腹痛や腹部の張りなどの自覚症状はなく、バイタルサインも普段通りで安定している。
これまでの経緯:基礎疾患に前立腺肥大による、尿閉があり在宅での尿道カテーテル使用中。尿中の浮遊物や混濁が多く、数日前にはカテーテルの閉塞による交換を行ったばかり。本日、特にルートが引っ張られたようなエピソードはなし。
ご家族の希望:数日前のトラブル(閉塞)もあったため、原因をしっかりと調べて治療が必要かどうか主治医に確認してほしい、と不安を抱えられている。
このように、「緊急性はないかもしれないけれど、放置はできないし、ご家族も不安がっている」という絶妙なシチュエーションにおいて、主治医へどのようにSBARを使って要領よく電話報告するかを、次の章から具体的に解説します。
SBARを用いた「伝わる報告」の具体例
電話での報告例
S(状況:Situation)
〇〇様について、19時にご家族から「真っ赤な尿が出ている」とオンコールがあり訪問しました。現在、バイタルサインに異常はなく、腹痛などの自覚症状や腹部緊張はありませんが、カテーテルバッグ内に赤褐色の血尿が400ml貯留しており、管内にコアグラ(血塊)を認めます。
B(背景:Background)
基礎疾患に前立腺肥大による尿閉があり、尿道カテーテルを留置中です。脳梗塞後遺症(左麻痺)でほぼ寝たきりですが、意思疎通は可能です。本日はベッド上で過ごし、食事時のみギャッジアップを行いました。ルートが引っ張られたエピソードはありません。なお、数日前に浮遊物と混濁によるカテーテル閉塞があり、7日前に交換した経緯があります。交換直後の血尿はありませんでした。昼頃までは通常の尿色だったとのことです。
A(アセスメント:Assessment)
数日前の閉塞・交換のエピソードや前立腺肥大の既往、管内のコアグラから、カテーテルの機械的刺激による尿道・膀胱粘膜からの出血、または前立腺部尿道からの出血の可能性も考えられます。現時点でバイタルは安定しており、腹痛やルート牽引の兆候はありませんが、出血量も多くコアグラも見られるため、再びカテーテル閉塞を起こすリスクも高い状態です。
R(提案:Recommendation / 依頼)
「ご本人・ご家族ともに、数日前の閉塞に続く今回の真っ赤な血尿に対して非常に強い不安を持たれています。現在、『今すぐ救急車を呼んで病院で原因を調べてほしい、治療してほしい』と、緊急搬送を強く希望されている状況です。
救急搬送の方向で対応してもよろしいでしょうか?それとも、経過観察として、明日受診の方向で検討されますか?
報告を行ったその後の流れ
この報告を受けた医師は救急搬送が必要と判断し、受入病院を調整。結果として救急車での搬送となりました。搬送するかどうかを決めるのは医師ですが、その判断材料を漏れなく届けるのが看護師の役割です。
実際の対応から学ぶ!SBAR活用3つのコツ
今回のケースを振り返ると、SBARを「型」としてコミュニケーションに使いこなすためのポイントが3つ見えてきます。
S:数値と事実を迷わせずに先出しする
「客観的な数値」や「確認できた事実」など、相手の判断に直結する正確な情報から伝えることで、聞き手は状況を素早く頭の中に組み立てられます。主観的な感情や長い経過の説明を先に持ってくると、肝心な情報が埋もれてしまいます。
A:主観ではなく「看護師の視点」を提示する
「わかりません」だけで終わらせず、現場の状況から推測できる「看護師としての気づきや仮説」まで添えて提示すること。今回も、手順通りの報告だけでなく『今の現場の状況から起こり得るリスク』まで踏み込んで意見を添えたことで、医師は次の判断へのスタートラインに立ちやすくなりました。アセスメントは情報の羅列ではなく、プロとしての見立てを示す場面です。
R:選択肢の形で提案する
「どうしましょうか」と丸投げするのではなく、「〇〇の方向で動きますか、それとも経過観察としますか」と具体的な選択肢を示すことで、医師は即座に決断しやすくなります。今回も本人・家族の希望を添えたうえで、具体的な二択を提示したことが、スムーズな連携につながりました。
まとめ
緊急コールは、状況を整理する時間もないまま報告に踏み切らなければならない場面が多いものです。だからこそ、S(事実を先に)・A(見立てを言い切る)・R(選択肢で示す)という型を体に馴染ませておくことが、次のオンコール対応での落ち着きにつながります。次に緊急コールを受けたときは、まずこの3点を思い出してみてください。報告時に迷った時に思い出していただけたら嬉しいです。
参考図書

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